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PICSYは何を目指すのか

地域通貨とコンピュータ

伝播のイメージ

互酬性原理

投資

ピクシーの展望


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■PICSYは何を目指すのか

まず、PICSY(ピクシー)がどのような社会的問題を解決しようとしているかをご説明します。

医者は患者を薬漬けにすると儲かるという問題があります。薬をあまり与えずに、患者を元気にすることができれば、その方が良いのですが、患者を健康にすると否とに関わらず、とにかく薬を与えた方が儲かります。これは、医者には医学的な専門知識があるけど、患者にはないという情報の非対称性の問題です。患者の無知につけこんで不当に儲けているわけです。

患者が医者の処方を正しく評価するのは難しいです。あるいは、評価できるようになった時、つまり治った時には、支払い(決済)が済んでしまっており、既に医者と患者の関係が切れてしまっています。

そこで、PICSYでは、関係が切れないようにします。その患者が元気になって、社会復帰し、バリバリ働けるようになれば、その収入に応じて医者の収入も変動する(伝播する)ようにします。

その患者の職業が、ラーメン屋だとします。患者が健康になり、ラーメンを売るようになると、その収入の一部は、ラーメン屋=患者を通じて、医者まで流れていきます。健康にならなければ、流れていきません。

そのような仕組みを導入すれば、医者は患者に対し、より早く健康になるような処方を施すことでしょう。逆に無用な薬を与えて患者を一向に健康にしないような医者は、伝播してくる部分の儲けが少ないので、PICSYの世界では、あまり儲からなくなります。

(もっとも、その患者は無類の遊び人なのかもしれないので、健康になることとと働けるようになることは必ずしも等価ではありません。しかし、ここでは、健康が活発な労働をもたらすという一般的な傾向があるものとします。)

■地域通貨とコンピュータ

ピクシーでは、このような仕組み(収入が伝播するような仕組み)を、最初から貨幣に組み込んでいます。

現在、みなさんが知っている貨幣は、日本銀行が発行しているお札です。しかし、最近、私的な組織や地方自治体の間だけで流通する貨幣が注目を集めています。それが地域通貨です。

例えば、ある村で、おじいちゃんの肩を叩いたら、1ポイントもらえる。その1ポイントを使って、他の誰かに、赤ん坊の面倒をみてもらう。赤ん坊の面倒を見た人は、また1ポイントを使って、他の誰かにパソコンの使い方を習う。というふうに、流通していきます。

地域通貨の多くは、利子がつかないという特徴があります。これは現在の日本銀行券にはない特徴です。我々は、地域通貨のような新しい貨幣を構想するにあたって、日本銀行券にはないような特徴を盛り込むことができます。今ではコンピュータが普及しているので、これまでは考えられなかったような、複雑な仕組みの貨幣を作ることもできます。

コンピュータが各自の財布=口座を管理し、難しい支払いも自動で計算してくれるのであれば、収入が伝播するような複雑な貨幣を作ることも可能です。携帯電話を用いれば、街なかでの支払いも面倒ではありません。

■伝播のイメージ

何かサービスを提供することを「貢献」と呼ぶならば、医者が患者を治すことも、ラーメンを売ることも、「貢献」ということになります。医者が患者を元気にし、元気になったことにより患者がラーメンをサービスできるわけですから、「貢献」の伝播が起きていることになります。「貢献」の伝播と収入の伝播はちょうど逆向きの流れになります。

 貢献の伝播:医者→患者→ラーメン屋の客
 収入の伝播:医者←患者←ラーメン屋の客

この矢印の向きを念頭に置きつつ、伝播のイメージを描いていこうと思います。

まず、医者が、患者を治します(貢献します)。それで、医者は、「治療代は、0.2ポイントです」と価格を提示します。患者は、医者の口座が0.2ポイント増えるように支払います。

患者が、元気になり、ラーメンを客に売ります。患者=ラーメン屋は、客に「一杯0.03ポイントだよ」と価格を提示します。患者は、ラーメン屋の口座が0.03ポイント増えるように、携帯電話か何かで支払いを行います。

しかし、その支払いの一部は、ラーメン屋を介して、医者まで流れていきます。ただ、そのような面倒な計算は、携帯電話越しにコンピュータがやってくれます。

■互酬性原理

伝播のイメージが描けたところで、もう少し、PICSYの狙いを明確にしていきいます。

世の中の商品やサービスには、「瞬間的に幸福量を高める側面」と「再生産に役立つ側面」の二つがあります。

ラーメン一つとっても、味がうまい、というのは幸福量の問題だし、食って元気になって働けるようになる、というのは再生産の問題です。極端な話、ラーメンが、うまいだけで全然栄養のないものであれば、その人は栄養失調になり、再生産できなくなります。

先ほどの医者と患者の話は、再生産的側面の強いものでしたか、世の中の多くの商品・サービスは、この二面性を持っています。

現在の世界では、「瞬間的に幸福量を高める側面」の方が、商品の評価の基準としてはより重視されているようです。

例えば、コンビニで売っているようなお茶には、香料がたくさん入っています。この香料は、体に悪い可能性が高いのですが、匂いがある方が好まれるので、投与されています。しかし、後々のことを考えると、体を壊せば、もちろんそれ自体害悪である上に、労働=再生産できなくなるので、その分、香料つきのお茶は、世の中に対する貢献度が低いことになります。しかしその点は十分に消費者の評価の基準として組み込まれていません。

商品の「再生産に役立つ側面」を正しく評価するには、

 ・情報の不足
 ・時間的な遅延

がネックとなります。が、PICSYでは、実入りの伝播という仕組みを導入することによって、このネックを乗り越えます。

我々は、先々の再生産に対する影響まで考慮に入れなければ、その商品の(したがって商品販売者の)、世の中に対する貢献度が正しく評価されたことにならないと考えます。

 貢献度=購買力

となることが社会にとって好ましいです。つまり貢献度に応じて購買力が決まってくるということです。これを「互酬性原理」と呼びます。

これまで、「瞬間的に幸福量を高める側面」ばかり評価されてきたわけですが、それでは不十分であり、もう一方の「再生産に役立つ側面」の評価をも組み込んで、それで儲けが決まるのでなければ、互酬性原理は成り立っていないと考えます。

■投資

現在の世界では、再生産する組織に対して資金を渡すことや再生産につながる商品を購入することを「投資」と呼んでいます。株の購入は前者の例で、教育投資や住宅投資は後者の例です。

しかし、PICSYでは、企業体ばかりでなく、全ての人間が再生産を行っており、全ての商品が、再生産的側面を有しているとみなします。したがって、PICSYでは、全ての取引を投資とみなします。ラーメンを売るという行為を客に対する投資と考えるわけです。ラーメンを食べた客が元気に働くのであれば、ラーメンは、客の味覚を満たしたという以上に、後々まで社会全体に対して貢献していくことになるからです。

子供用の玩具を想像してもらえればより分かりやすいかと思います。その玩具が、子供の知性を育むという性質がより濃厚であるならば、子供に対しより高い投資を行っていることになるのです。

したがって、投資を行った主体に対し、キャッシュバックされるような仕組みが要請されてしかるべきです。

ここで注意が必要なのは、通常の感覚だと、お金を渡すことを投資と考えがちですが、ここでは、商品を売ることこそが投資であるととらえていることです。ラーメンが再生産をもたらすのであり、ラーメンを食べさせることこそが投資なのです。

したがって、「投資」は「貢献」と同じ矢印の向きになります。貢献=投資することによって、後々になって収入が伝播して戻ってくることになるのです。

 貢献の伝播:医者→患者→ラーメン屋の客
 投資の流れ:医者→患者→ラーメン屋の客
 収入伝播:医者←患者←ラーメン屋の客

販売は、商品と引き換えに株券を受け取るという営みなのだとも考えれられます。株券を保持しているのだから、受け渡し先の儲けに応じて、配当がもらえてしかるべきです。この配当が収入の伝播に相当するわけです。

■PICSYの展望

全ての取引が投資になることによって、人々は、自分が売っている商品やサービスが、ちゃんと後々まで世の中の役に立っていくのだろうか、ということを真剣に考えるようになります。

一回こっきりの、楽しみのために消費されるような商品は、さほど収益をもたらさなくなります。人々のスキルアップを図るようなサービスは儲かるので、生産性は今まで以上に高まることでしょう。

「投資」という性格上、PICSYは、先進国よりも発展途上国においてこそ、より高い効力を発揮するものと思われます。発展途上国の中でも経済停滞に悩まされている国は特に、投資が不足し、生産性が低い水準で留まっているからです。

もちろん、先進国においても、悪徳医療の問題や、体内汚染を発生させる商品が売られている問題に対し、抜本的な解決をもたらすかもしれません。

さらに、映画のような娯楽であっても同じようなことがいえます。たとえば、ゴダールというフランスの映画監督は、ハリウッドの有名監督に大きな影響を与え、尊敬の念を集めてますが、本人自体は、莫大な興行収入にめぐまれているわけではありません。PICSYを用いると、ゴダールにもハリウッドへの収入が伝播するということが起きるかもしれません。